古澤龍「flow view draing 1,2」を見てきました。 / Denchulab.


平櫛田中邸の階段を上がるとふすまが閉まっていた。開けようと試みたけど少したてつけが悪い。思わず一階の受け付けのスタッフに声をかけて本当に開けてよいか確認してしまった。作家も実は二階にいたらしい。少し力を入れて開けると作家の古澤龍がいた。

ふすまを閉じると部屋は真っ暗だが窓に張られた黒い布に開けられた小さな穴(実際は十字の切れ込み)から流れる光が部屋にある映像を写していた。ピンホールカメラの原理だという。ということはつまり部屋に充満している映像はその向こうにある現実そのものというわけだ。平櫛田中邸の向こう側は谷中霊園。墓地である。今日はシルバーウィーク真っ只中ということもあり観光客の姿が見える。見えるといっていいのかどうか。部屋に充満したぼんやりとした映像でそれが判別できる。

光は全て自然光なので夕方や夜になると見ることができない作品である。部屋に充満していた映像は紛れも無い現在で同時に向こうで起こっていることなのだ。私が今日見た映像は、ほぼ確実に、今日限りでありあの瞬間限りの映像だということになる。偶然よりも強烈な現在だ。否定のしようがない一回限りの映像を私は見たことになる。

これを奇跡と言わずして何という。

二部屋目はレンズを通した映像が障子に投影されている。レンズを通ってきた光は、これもまた現在の自然光だ。ピンホールカメラの部屋よりもピントが合っている。機械を使って自動で焦点を合わせているらしい。より人の目に近いメカニズムだ。一つ目の部屋が眼球の中だとするならば、二つ目の部屋は目の奥の神経とでも言えばよいのか。

とにかく今までにない強烈な体験をすることができた。

古澤龍
http://ryufurusawa.com/
平櫛田中邸
http://taireki.com/hirakushi/
Denchulab.
https://www.facebook.com/events/467611000080105/

[会期]2015 年9 月20 日( 日)~27 日 ( 日)
開場時間/ 11 時~19 時  ※9 月20 日( 日) のみ11 時~17 時
[会場]旧平櫛田中邸(東京都台東区上野桜木2-20-3)
[料金]500 円※建物の保全活用金として
[参加作家]アートとサイエンスのあいだ実行委員会、佐藤史浩+原口寛子、春木聡、古澤龍
[公募審査員]白石正美(SCAI THE BATHHOUSE)、熊倉純子(東京芸術大学音楽環境創造科教授)、椎原晶子(でんちゅうず・たいとう歴史都市研究会)
[主催]NPO たいとう歴史都市研究会、一般社団法人谷中のおかって、でんちゅうず
[特別協賛]アサヒビール株式会社
[助成]アサヒグループ芸術文化財団
[協力]井原市、平櫛弘子氏、東桜木町会、東京芸術大学大学院保存修復建造物研究室
アサヒ・アート・フェスティバル 2015 参加企画