「ツノムシテン/触展」を見てきました。


女装の私が、東日本橋駅からすぐのgallery*yorucaで4月19日まで開催されていた「ツノムシテン/触展」を見てきました。


デザインと生活文化をめぐるデザインフォーラム "foro 08" (フォロ・ゼロット) のメンバー 西森陸雄、今村創平、橋本夕起夫、松下計、皆川明が2009年2月よりスタートさせた「五感とデザインの関係性」をテーマにした展覧会プロジェクト。その第4弾が本展示。「触覚」をテーマにしたデザインに挑戦する作品群は、見た目に異様。触れたい触れたくないの境目をウロウロと行き来しながら鑑賞できる展示でした。

その中でも特に、ミナ・ペルホネンの皆川明さんの作品が印象的でした。

昆虫の触角を模したヘルメットが置かれていました。全部で3種類。ただただ長い触角が2本伸びているヘルメット。蛍光イエローのビニル製のチューブが何本も伸びているヘルメット。先端に鈴のついた触角が2本あるヘルメット。ヘルメットは自由に手に取る事ができ、もちろん、頭にかぶることができます。gallery yorucaは吹き抜けの階段を挟んが1階と2階があり、その2つは開放的なのですが、広さはそこまで十分ではありません。(だからこそできる展示が素敵なのですが。)

さて、そこまで広くない展示スペースで長い触角のヘルメットをかぶるとどうなるか。ちょっと頭を動かしただけで触角が天井にぶつかります。「がりっ」と音がし、コンクリートと針金が接する硬い感覚がヘルメットを伝わり頭に届きます。条件反射で首をすくめ、そして周りを伺った自分に驚きました。命を狙われているわけでもないのに。びくびくしてバカバカしい…。しかし確かに触角を伝わる違和感で警戒心が高まりました。「んなばかな。大げさに言い過ぎじゃないですか。」多少、誇張しているのは否定しません。ただ、可動範囲が急に狭まる感覚を想像してください。恐ろしいです。

頭をそろそろと動かし、触角を含めた自分の身体を確認します。なんと不自由で窮屈なんでしょうか。何もできません。動けません。そろそろと静かに音を立てないように、動物に例えるならば「ナマケモノ」程の速度でしか動けないのです。展示スペース内でしか体験することのできなかった触角の触覚。建物の外にでて体験すればこの閉塞感から開放されるのかしら。妄想を巡らせてみたのですが、電柱や看板や電線や車や自転車や潜り抜ける扉の高さ、乗り物の天井の低さや一般的な建物の天井…生きづらさしか想像できません。

「私たち人間はもっと敏感であるべきだ」とか「生活環境に情報量が多すぎるのが問題だ」とか声高に言うつもりは無いです。触(ツノムシ)展を通じて、思った以上に人間はコンパクトで、その割に繊細。にも関わらず刺激的な環境で生活しているのだなあと再認識できました。湯葉の厚みほどギリギリの状態で、私たちは歩いているんですね。


…うーん。もう1つ。この展示を通じて感じたこと。鈍感な自分に気づけたかもしれません。そこに何があるのか、自分にとって危険なのかそうでないのか、自ら情報を刺激を取得し現状を把握しようとする触感が鈍感になっている。逆に、与えられる刺激に対しては敏感なままでいる。「私たち人間はもっと敏感であるべきだ」とまで言いませんが、刺激に対して受け身でいることをもう少し意識したい。なるべくなら積極的に感じる姿勢を保ちたい、と思わせられます。

この展示は五感をテーマにしています。今回は第4弾でした。という事はまだ1回展示がある予定です。次回が楽しみなグループ展でした。


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【ツノムシテン 触展】
会期:2012/4/6~4/19【終了】
会場:ギャラリーヨルカ (MATERIO base. 内)
詳細:www.materiobase.jp