『藤堂良門 展 - 7000 Basalt』を見てきました。



ART FRONT GALLERYで開催されていた『藤堂良門 展 - 7000 Basalt』を見てきました。








藤堂氏は石の彫刻家です。石を削り違った形にする彫刻ではありません。石でガラスを挟みます。1cm弱ほどの薄いガラスを積み重ねた積層ガラスが様々な石に挟み込まれている作品です。積み重ねられたガラスはエメラルドグリーン色をしています。灰色や茶色にゴツゴツした石に挟み込まれたガラスは、とても美しい色を見せます。





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石は藤堂氏が自ら選びます。ドイツ、デュッセルドルフが活動の拠点の藤堂氏はベルリンやノルマンディー海岸を歩き作品に使う石を拾いあげます。集めた石を切り、ガラスを挟み、磨きます。まるで石の一部がそっくりそのまま積層ガラスに変化したかのように見えます。積層ガラスは、物語や歴史が刻まれた本のページにも見えます。








石の経験を読み解かせるかのように、一枚一枚のガラスが私たちに問いかけます。天気の変化、通る人の変化、音や衝撃。石が内在化してきたありとあらゆる事象を、私たちは藤堂氏の作品を通じて想像することができます。作品を紹介するカードには、必ず収集した場所が明記されています。場所に関連した歴史は、石が伝える経験に彩りを与えます。








今回の展示では、石の彫刻の他に、本の間に積層ガラスをはめ込んだ作品も展示されていました。本を媒介として、作家が、文字が伝えようとした歴史や思想は、同様に本を通じて経験を重ねます。藤堂氏が一冊一冊選んだ本が経験してきたあらゆる事象を想像する。作品を手に取るとずっしりと重い。それは、もちろんガラスだからなのですが、歴史の、時間の重さでもあります。





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藤堂氏が石を収集する場所、そして選ぶ本の共通点は「戦争」です。確かに、社会と自然が最も強烈に関係する(物理的に)点は、「戦争」であるかもしれません。展示は終了しましたが、藤堂氏のサイトには美しい作品の写真や製作過程が紹介されております。ぜひ一度見てください。





彫刻家 藤堂良門_TODO RAMON